令和4年度 生徒指導セミナー 研修概要

趣旨
 今日的な生徒指導上の諸課題への対応をテーマに、困難な状況にある児童生徒の理解に努める。

第1回 令和4年6月7日(火)
 講義「学力格差の放置と影響」
 講師 関西大学 教授 若槻 健 氏

 学力格差の縮小、市民性教育の研究者の立場から、その根底にある人権教育の観点をふまえ、学校づくりや授業づくりについて講義があった。学校教育のあらゆる場面を通じて子どもの人権・人権文化をより確かなものにしていく必要がある。授業がわかることは人権が尊重されることであり、仲間と関わったり失敗したりしながら主体的に学べる環境をつくることや、子ども一人一人の「もちあじ」が大切にされる集団づくりが大切である。

  受講者からは、「学校は失敗してもよい場所。成功体験を重視して準備をし過ぎることがあった。安心感のある学級づくりを目指したい。」「自分の授業を振り返り、本当に分からない生徒に寄り添うことができていたか考えさせられた。」などの感想があった。

                                         

第2回 令和4年7月29日(金)オンラインによる研修
 講義「いじめの構造とメカニズム」
 講師 明治大学 准教授 内藤 朝雄 氏

 いじめ問題の研究者として、いじめ発生のメカニズムや学校がもつ仕組みや人間関係による構造的な問題について講義があった。学校が一人一人の違いを認め、尊重し合う小さな社会となることが望まれる。自分がどう生きるか、どう生きることが幸せかを、個人が試行錯誤しながら決定していけるような環境を設定していくことが学校の役割である。

 受講者からは、「教育の根本を見直す機会となった。一人一人の個性を大切にし、子どもの人権を最も重要なこととする姿勢の大切さを感じることができた。」「小さな社会(学校)の中で当たり前のことに疑問を感じなくなってしまっていることに危機感を感じた。」などの感想があった。

第3回 令和4年9月15日(木)
 講義「脳からみるネット依存と対策」
 講師 富山大学 助教 山田 正明 氏

 子どもの生活習慣病について研究を行う医師の立場から、ネット依存を中心とした体への悪影響について講義があった。娯楽としてのネット利用は、楽しく、疲れず、飽きないので危険な依存物である。依存症になると脳が変化し、様々な症状を引き起こす。平日2時間未満にネット利用を制限するなどの対策を講じるとともに、親自身もネット時間を減らし、親子の会話を増やすことが子どもの健康を守ることになる。

 受講者からは、「大人に比べ子供は脳が未発達で依存症になりやすいことを子供達だけでなく、保護者にも伝えていく必要を感じた。」「ネット依存症は病気であり、脳に悪影響を与えることを伝え、使用に制限をかける等の予防に努めたい。」などの感想があった。

第4回 令和4年11月1日(火)
 講義「学校ハラスメントの防止」
 講師 富山県弁護士会 弁護士 本田 隆慎 氏

 法律の専門家である弁護士の立場から、学校ハラスメントの現状や事例、防止のための対策について講義があった。児童生徒同士のハラスメント(いじめ)に対する対応として、刑事責任・民事責任の有無及びその大きさを決めるのは司法の役割であり、いじめを行った児童生徒が今後同じことをしないように指導し、いじめを受けた児童生徒が安心して教育を受けられるための措置を取るのが学校教育の役割である。

 受講者からは、「自分の認識を見直す機会になった。まずは当事者の話をよく聞いて問題点を明確にすることが大切だと感じた。」「法律の観点を持っていることは、自分が判断、行動する時の一つの指針になると感じた。」などの感想があった。